5G学習会報告2
東京都のデータ・ハイウェイ構想
市民科学研究室の上田昌文さんは、東京都がオリンピック開催に向けて突出して5Gネットワークの整備(Tokyo Data Highway)に取組んでいることに警鐘を鳴らしています。
都は、元Yahoo社長の宮坂学氏を副知事に迎え、通信会社(キャリア)等と連携する仕組みを構築して次の3つのアクションを進めています。
Action1: アンテナ基地局設置への都の保有するアセット(資産)の開放と利用手続きの簡素化
(→ 中継基地局の設置が可能な都が有する建物・道路・橋・公園・バス停・信号・街灯などをデータベース化してキャリアに示し、基地局の設置を促す。
そのために地方自治法に定める行政財産の目的外使用の要件を緩和する条例を制定する)
Action2: 5G重点整備エリアの設定
(→ 重点整備エリアは、①オリンピック会場 ②西新宿都庁近辺 ③東京都立大学)
Action3: 東京都自らの5G施策の展開
(→ 都は6月19日、地域限定の高速通信規格「ローカル5G」の無線局を設ける免許を自治体で初めて取得。今後、5Gの電波を使う実験場を江東区の都立産業技術研究センターに整備。)
この中で特に周辺自治体への波及が懸念されるのが、Action1の「基地局設置のための行政財産の開放」です。
キャリアによる5Gサービスの全国展開において障壁となるのが基地局の設置場所の確保で、自治体が行政財産を提供すれば大きな助け舟。
しかし、5G推進について住民の合意を得ないまま行政財産を提供することは問題です。
スーパーシティに区域指定されると?
東京都は、スマート東京(東京版society5.0)を掲げてデータ・ハイウェイ構築を進めていますが、鎌倉市も鎌倉版スマートシティ構想の策定に取組み、そこでの議論を踏まえて、今年9月と目される国家戦略特区「スーパーシティ」の公募に応じることを検討しています。
スーパーシティは、①移動 ②物流 ③⽀払い ④⾏政 ⑤医療・介護 ⑥教育 ⑦エネルギー・⽔ ⑧環境・ゴミ ⑨防犯 ⑩防災・安全の領域から少なくとも5領域以上の先端技術をデータ連携基盤(都市OS)により連携させて「まるごと未来都市」を実現するというものです。
選択する領域にもよりますが、スーパーシティでは、5G(あるいはローカル5G)の整備が必要となる可能性が極めて高いと思われます(例えば、MaaS※や車両の自動走行)。
※ あらゆる公共交通機関を、ITを用いてシームレスに結びつけ便利に使えるようにするシステム
中継基地局条例を持つ鎌倉市
鎌倉市には、「携帯電話等中継基地局の設置等に関する条例」(2010年4月1日施行)があります。
条例は、携帯電話等の事業者が市内で中継基地局(アンテナ)を設置しようとする時には、鎌倉市に計画書を提出し、基地局の高さの2倍の範囲の近接住民および近接住民が属する自治会・町内会の代表者に計画の概要を事前に説明し、意見を聴き、紛争の防止に努めることを規定しています。
周波数が極めて高い5Gの電波は到達距離が短く、100mおき(20~150mおきとの見解も)にスモールセル・アンテナを設置する必要があります。スモールセル・アンテナ自体は小型で、壁面やマンホール内に貼り付けたりする形で設置されます。
事業者は、「スモールセル・アンテナの設置についてまで、いちいち届出したり住民説明を行ったりできない」と主張するかもしれません。
しかし、5Gの導入で、電磁波(電波)被曝量はそれ以前の世代の移動通信に比べ「桁違い」に増大します。しかも、これまでの基地局と違い、スモールセルは小さくて視認しづらいため、体調不良になるまで、あるいは健康被害が生じた後も、設置に気づかずに過ごすことになる恐れがあります。鎌倉市では5Gの基地局についても、条例を適用して住民周知が図られるようにしていくべきと市民運動から声が上がっています。
世界で5Gの運用についてはさまざまな対応にわかれ、市民運動により規制が進んだ事例が多数あります。特に健康被害に着目するものです。
電磁波暴露は頭痛や発がん性などの健康被害への特定が難しいですが環境ホルモンの影響が叫ばれるようになったのはすでに甚大な被害が出てからでした。世界の数多くの論文や被害の様子を見ても電磁波暴露が安全と言えないのは確かです。現在の日本に置いて電磁波過敏症に悩まされる人が756万人{2020年1月1日現在}いる中強い電磁波が飛び交う5Gのリスクについて知る必要があります.EU圏は予防原則の概念から電磁波規制が強く特に子どもに対する配慮がされています。日本は世界で一番緩い規制数値であり科学物質暴露同様あまりにもずさんです。事業者や行政に確認、情報公開を持って皆で考えるべき時に来ています